読書ノート:水木しげる『三途の川~』水木しげる『三途の川の渡り方』光文社カッパブックス2000● 孝養(こうよう) ちなみに、孝養には三種があり、衣食をほどこすのは下品(げぼん)、両親の望みどおりに育つことを中品(ちゅうぼん)、両親の生死にかかわらず親に向かって功徳を回向するのを上品(じょうぼん)という。これが、今の上品(じょうひん)、下品(げひん)の語源になっている。p. 65 ● 宗教と守護霊 ぼくは宗教にはあまりいい感じを持っていなかった。戦争から戻ってきて、次になんになろうかと考えたとき、「坊主はいいぞ」と聞かされたので、仏教書を読んでみたことがある。そうしたら眠りを「睡魔」とよんで、修行の妨げとされていて非常に不愉快になった。ついでに『論語』も読んだのだが、こちらは「男女七歳にして席を同じうせず」、「四十歳にして惑わず」といった言葉が自信過剰に思えて、これも読むのをやめてしまった。『新約聖書』も読んでみたのだが、「色情をいだいて女性を見るものは、その目をえぐりすてよ」という一節があって、いくら目があっても足りないと諦めた。 だいたい人間は自意識が過剰にできている。自分というクルマを自分の手で動かしていると思っている。でも、じつは、もう1つの世界からいろんな影響を受けている。背後霊や守護霊と呼ばれるものはいると考えた方が幸せに生きられる。ぼくなどは戦地で爆撃にあって左腕をなくしたうえ、マラリアで何度も生死の境をさまよった。終戦後、捕虜となって食うや食わずの期間もあった。それでも生きていられたんだから守護霊はいると思っている。P.160-161 ● 水木さん 本来は、死後の世界は、もっと自由だったはずだ。死を恐がるというのは、いままでの人間の文化というのが貧困だったせいにすぎない。水木以後は変わるべき、いや、変わるでしょう。P.152 ● 荒魂(あらみたま)と和魂(にぎみたま) たとえ、「荒魂(あらみたま)」になっても、生きているものからの回向(えこう)があると「和魂(にぎみたま)」に変わっていくという説を紹介したが、霊をどうやってまだめるかということはたいへんなテーマだった。 P.187 |